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じつは、少し、酔っていた。
地下鉄への階段を降りようとしたとき、 ふと懐かしい路地が目に入ったのだ。 一杯だけ飲んで帰ろう…。 なぜだか、その時そう思ったのだ。 もう、ン十年も寄ったことがない。 むかしのままの場所に店はあった。 「ズボンが短いのとサンダル履きは入れない」 との張り紙がある。まぁ、ね。若者だけに限らずね。 ぎいっ、と扉をあけて入る。 知ってる空間なのだけど、知らない店がそこにあった。 黒ベストの中年女性バーテンダーがいる。先客は一人。 壁にかかった薄型テレビを見ながら野球の話をしてる。 奥は薄暗いのだが、妙に蛍光灯がまぶしい。 一瞬立ち止まってしまったが、踵を返せないのだなぁこういう時。 カウンターの端に座る。いらっしゃいませ、の声を聞いたかどうか。 棚には古い酒瓶や酒会社の販促物が古道具屋のように積まれている。 「なに、します?」とプラスチックに挟まれたメニューが渡される。 そのなかに、モヒートの文字はなかった。 しばし考え、ボストン・クーラーにする。 極薄のグラスである。ビールグラスでこんなのがあるが。 ラム・カクテルのはずだが、想像と違って甘口である。 改めてゆっくりと店内を眺める。 かつて、背が高く痩身スマートなマスターがいた。 このカウンターはいつも常連客が占めていて座れなかった。 奥にあった喫茶店のような空間はいまでもやってるのだろうか。 先客は転勤族のようだが、大阪のあれこれを自慢気に話してる。 そうか、ふらり迷い込んだ観光客に間違えられたのかな。 ま、そんなものだが。 一杯で、店を出る。
by kishimoto_hajime
| 2012-09-28 00:07
| Bar & Pub
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Comments(2)
えぇ〜〜、そうなんですか。
社会人になって初めて連れて行ってもらった由緒正しきバーだったのに。悲しいですね。ハーフ&ハーフもここで知りました。 まっ、時は流れるのですね。
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Commented
by
kishimoto_hajime at 2012-09-28 16:53
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