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・正平調(神戸新聞)2018.7.16より 織田作之助の「夫婦善哉」で知られる大阪ミナミの法善寺横丁近くに、小劇場「TORII HALL(トリイホール)」がある。落語や講談の灯を守る存在として27年の歴史を刻んできた◆この劇場が建つまで、ここには旅館「上方」という宿があった。竹細工をふんだんに使った建物で、歌舞伎役者や芸人、学者らが投宿した◆その主人、鳥居鉄三郎さんはなかなかの文化人だったようだ。上方藤四郎の筆名で文章を書き、川柳を作った。ボクシング評論家でもあり、デイリースポーツに記事を寄せた◆「とうしろう」は素人の意味だが、はにかみが過ぎる。「明滅する雑踏千日前の一隅にアブラににじんで薄よごれた奉納ちょうちんのあかり。ゆらめくロウソクの灯…」。40年前に没し、その後に編まれた遺稿集には味わい深い随筆が並ぶ◆親交のあった桂米朝さんが「一度ゆっくりと芸のことを教えて頂こうと思っていましたのに」と惜しんだほどの粋人。ホールはその遺志を継ぎ、米朝さんの意向もあってできた◆トリイホールに続き、大阪では「天満天神繁昌亭」の人気が定着した。先日開館した「神戸新開地・喜楽館」も上々の滑り出しだ。一時は危機にあった上方文化の盛り上がりに、鳥居さんも目を細めているだろう。 そうか、 先日の千日前のあのお坊さんは、 こういう御家の人だったのですね。
by kishimoto_hajime
| 2018-07-21 00:11
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